時効援用に関する注意点

【1】時効中断

時効中断とは、それまでに進行していた時効期間のカウントがリセットされることをいいます。


時効が完成する前に時効中断になってしまうと、それまでの時効期間計算は降り出しに戻り、再度、ゼロから時効成立へ向けた期間計算が始まることになります。

時効中断には、以下の3つがあります。


(1)請求

・裁判上の請求

裁判上の請求とは、訴訟提起や支払督促申立、調停申立、などの法的な手続きによる請求のことをいいます。


・催告(裁判外の請求)

催告とは、裁判外の請求のことをいいます。

催告は、裁判上の請求の場合とは異なり、あくまでも「仮の時効中断」であり、一時的に6ヶ月間のみ延長され、時効完成の猶予が得られる、というものになります。

方法は問われておりませんが、通常は、督促状の送付や電話による請求などではなく、催告の証拠を残すために、内容証明郵便による請求によって行われます。

なお、催告は一度限りしか認められませんので、重ねて催告しても、さらに延長することは出来ません。

また、催告後6ヶ月以内に「裁判上の請求」などの、他の時効中断措置を取らなければ、遡ってその効力が失われます。

(2)差押え・仮差押え・仮処分

これは、強制執行や保全処分などの法的手続きを取られた場合のことです。

(3)債務の承認

「債務の承認」には、一部でも弁済した場合や、支払期限の猶予を求めた場合、もしくは和解契約書や債務承認書への署名捺印した場合などが該当します。


【2】時効利益の放棄

時効利益の放棄とは、時効が完成することによって得られる利益、すなわち「法律上の支払義務を消滅させることの出来る権利(時効援用権)」を放棄する、ということです。

時効完成前の放棄は法的には認められていません。

民法第146条(時効の利益の放棄)
時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

つまり、時効完成後であれば、その利益を放棄して、支払義務を消滅させないことが出来るのです。

時効の利益を放棄する方法は問われません。
裁判を起こされた場合でも、債務者が援用しない限り、裁判所は、時効が完成していることをもって裁判をすることが出来ません。

民法第145条(時効の援用)
時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

そのため、仮に時効期間が経過している場合であっても、一部でも弁済をした場合や、債務承認をした場合、および、訴訟を提起されて判決が確定した場合には、時効期間はリセットされ、債務の支払義務が生じてしまうのです。

最高裁 大法廷 昭和41年4月20日判決要旨
「消滅時効完成後に債務の承認をした場合において、そのことだけから、右承認はその時効が完成したことを知ってしたものであると推定することは許されないと解すべきである。 しかしながら、債務者が、消滅時効完成後に債権者に対し当該債務の承認をした場合には、債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしないであろうと考えるであろうから、債務者が時効完成の事実を知らなかったときでも、その後その時効の援用をすることは許されないと解すべきである。」

【3】保証会社による求償債権

借入先との関係においては、本来、最終弁済期から5年が経過することで時効が完成します。

仮に債権が譲渡された場合であっても、「債権譲渡」は、債権の性質を変えずに債権者の地位のみが移転しますので、時効の完成に影響を及ぼしません。

しかしながら、借入する際に保証会社が付いている場合には、その保証会社が原債権者に代位弁済して債務が消滅し、新たに保証会社が「求償権」という債権を持つことになります。

そのため、当初の契約が最終弁済期から5年以上経過していたとしても、保証会社が代位弁済をした時から新たな債権が発生となり、時効期間の進行が開始されるのです。


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